私の王子様は、冷酷なんかじゃありません


「へっ……?」


強引に肩を引かれ、むりやり王子の方を向かされる。

泣いている顔を見られたくなくて、
急いで顔を伏せようとするけれど、王子が私の顎をつかんでグイッと持ち上げ、
それを阻止した。


「な、なにする…………んんっ…」



私の唇に、王子が唇を重ねる。

一瞬、何が起こっているのかわからなかった。



わ、私……王子にキスされてる……!?



「ん、んんっ……」


やがて降り注ぐキスの雨。

何度も何度も角度を変えて繰り返されるそのキスを受け止めるのにいっぱいいっぱいになる。

え、えええええええっ!?

なんで王子は私にキスなんてしてるの……?


「ん、んんーっ」


キスされている理由がわからなくて混乱する。

息がうまく吸えなくて、苦しい。


でも、それが幸せで。

脳が溶けてしまう程に甘いそのキスに、何も考えられなくなった。


「葉月……」


キスの合間にそう囁かれ、
溶けてしまいそうになる。


そして、王子がいきなり唇の上で囁いた。



「俺も、葉月の事が好きだよ」

「…………っっ!?」




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