私の王子様は、冷酷なんかじゃありません

いただきます、と手を重ねて二人で夕食をとる。


「ん……美味しい」


王子は私がつくったものを何でも美味しそうに食べてくれるから、私まで嬉しくなる。


「葉月、厨房でも働けそう」

「それは無理ですよ、私調理師免許、もってないですから」


無理ですよ、なんていいながら、その言葉がにやにやしてしまいそうなほど嬉しくて、内心で大喜びする。

だってそんなの…殺し文句だ。


「じゃあ、前働いてたとこでも、店員として働いてたの?」


「あ、そうです。レジとか接客とかやってました」


前働いていたラーメン屋さん。

別に元々ラーメンが好きでもなんでもなかったわけなのだが、住み込みで働けるという条件に釣られた、というのがそこで働くと決めた最大の理由だった。

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