私の王子様は、冷酷なんかじゃありません


「…………。」


黙りこむ私に、王子がなにもなかったように切り出す。


「葉月、じゃあ明日一緒に店行こう。早速明日から手伝ってもらってもいい?」



王子の質問に頷いただけではいと返事をしなかったのは、ちょっと意地を張ったから。


王子、もうちょっと自分を自覚してよ。


ただでさえ男に免疫のない私には、王子といると嫌でもドキドキしちゃうんだよ。


こんなことなら、冷酷王子の方が全然いい。


こんな、とんだ鈍感無自覚天然タラシ王子だって知ってたら、学生時代にあんなに王子に夢中になんかならなかったのに!


無自覚とかもう、ほんとになんなの。


あぁあ、もう!


「何怒ってるの」


「お、怒ってなんかいません!」


そのあとしばらく、怒ってるだの怒ってないだの不毛なやりとりは続いて。


そして眠たくなってソファーに横になってすーすー眠り始めた王子をおこさないようにゆっくり後片付けをして、私は今日の仕事を終了したのだった。


< 66 / 300 >

この作品をシェア

pagetop