私の王子様は、冷酷なんかじゃありません
「…………。」
黙りこむ私に、王子がなにもなかったように切り出す。
「葉月、じゃあ明日一緒に店行こう。早速明日から手伝ってもらってもいい?」
王子の質問に頷いただけではいと返事をしなかったのは、ちょっと意地を張ったから。
王子、もうちょっと自分を自覚してよ。
ただでさえ男に免疫のない私には、王子といると嫌でもドキドキしちゃうんだよ。
こんなことなら、冷酷王子の方が全然いい。
こんな、とんだ鈍感無自覚天然タラシ王子だって知ってたら、学生時代にあんなに王子に夢中になんかならなかったのに!
無自覚とかもう、ほんとになんなの。
あぁあ、もう!
「何怒ってるの」
「お、怒ってなんかいません!」
そのあとしばらく、怒ってるだの怒ってないだの不毛なやりとりは続いて。
そして眠たくなってソファーに横になってすーすー眠り始めた王子をおこさないようにゆっくり後片付けをして、私は今日の仕事を終了したのだった。