私の王子様は、冷酷なんかじゃありません

ガランっと、背後の方で扉が開く音がした。

裏口……だろうか。

そこから店内に入ってきたのは男の人で。

黒髪で長身の見覚えのあるその人に、王子に公園で会った三日前と同じくらいの衝撃をうけた。

だって私、この人を知ってる。



「……朝霧先輩…?」



誰にも聞こえないような小さな声が漏れる。


「朝霧、おはよ~」


そういって明るく挨拶する美咲さんにおはよ~と返事をして軽く会釈して返す朝霧先輩。

そして…その視線は美咲さんとむかいあうように座っていた私にむけられる。

誰?というようなその視線につかまり、気づけば私は立ち上がっていた。

「きょ、今日からここで働かせてもらいます、佐原葉月と申します!よろしくお願いいたします!」

そういって頭を下げる。


「君が佐原さんか。朝霧夕斗です。よろしくね」


そういって爽やかに微笑む朝霧さんは、当たり前だけど記憶の中の朝霧先輩よりちょっと大人だった。

それに…相変わらず優しそうなその雰囲気に癒されてしまう。
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