龍瞳ーその瞳に映るもの
「来てくれてよかった」

あの時いたイクヤとは全く違う雰囲気で
私に乱暴しようとしたイクヤと同一人物には
思えない変わりよう。

「手を組むってどういう意味」

だけど、瞳の奥に見え隠れする眼差しは
うまく言えないけれど濁っている。
改心とか反省とかそんなんじゃなく
単に私の力が欲しいだけなんだと思う。

「美緒の事、調べたんだ」

そう言ってテーブルに出した数枚の写真には美緒と男の人の後ろ姿が写っていた。

「美緒、男いるんだろう」

それが運命の人だとわかったけれど
イクヤに言っていいのか悩んだ。

「相手の男、ただモンじゃない」

険しい顔で写真に写る男の人を指差した。

「絶対に顔を写させない。尾行ついてるとかわかってないはずなのに必ず死角に入り込む。これは素人じゃない」

美緒を尾行して見失わなかったのは
この写真が撮れた一日だけで
あとは見事に巻かれているという。
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