龍瞳ーその瞳に映るもの
「携帯、持ってないの」

連絡先を教えてくれと言われて
手段がないと伝えると驚かれる。
それは仕方ない。

「じゃあ、これ俺の携帯番号。
一日に一度必ず連絡して。
どんな些細な事でもいい、それと
美緒がお洒落して出て行ったら必ず
連絡して欲しい」

「わかった」

イクヤに近づくため、全て条件を飲む。

「じゃあ、また連絡して」と
テーブルの上の伝票を取った。

私が頼んだオレンジジュースのお金は
受け取ってもらえなかった。

今日のイクヤだけ見ていれば
美緒ちゃんに思いを寄せる普通の少年。

だけど、そうじゃない。
電話でイクヤは言った。
手を組まなければ美緒を傷つけると。
そして伝票を手にしたイクヤはこうも言った。

「もし裏切ったら人間として生きれなくする」

その意味は言わなくてもわかる。
イクヤは薬に手を染めている。

長袖を着ていたから注射針の痕はわからない。
自分自身に打っているかもわからない。
だけど、何らかの関係はある。
< 231 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop