龍瞳ーその瞳に映るもの
行きたくないと言いながら
本当は行きたかったのかも知れない。

お祭りに行く美緒ちゃんやクラスメートの背中を見送ったあの日の匂いや情景を
今でもはっきり覚えている。

「来年、行こう」

平気なフリをしなきゃ心が折れそうだったからどんな事も興味ないフリをしてた。冷めたフリしなきゃ泣いてしまうから
どんな事も興味ないフリをしてた。

でも、もういいんだ。
自分の思う事を口にしてもいいんだ。

「みんなで浴衣着て行こう」

私はもう一人じゃない。

「あ、いいね、それ」

「わっ、楽しそう」

「浴衣ねぇ、暫く着てないからタンスから出さなくちゃいけないわ」

ほらね、みんな笑顔で返してくれる。
こんな未来があるんだよと
あの頃の私に教えてあげたい。
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