龍瞳ーその瞳に映るもの
ひとしきり吐いたあと、急に現実に戻る。

梓が何故いるのか?
いや、梓じゃなかったかも知れない。
イクヤだったかも知れない。
梓を思いすぎて最近は幻影を見る事が増えた。

きっと、また幻影を見たんだとトイレから出ればチェアには誰も座っていない。

やっぱり幻影だったとベッドに
戻ろうとした美緒の目に飛びこんできたの窓辺にもたれた梓だった。

「ヒィィィ」

奇怪な声を上げずにはいられない。

「あ、あ、梓っ」

その声にイクヤも目をさます。

「ッ、なんだ、おまっえ?!!」

眠気も一気に吹き飛んだイクヤは飛び起きた。

「ずっと会いたがってただろおまえら」

感情のない顔でそう言った梓は不気味で
自分が真っ裸だって事を忘れていた。
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