先生のことなんて好きにならない!
「こんな時間まで補習なんて大変だね」
電車が動き出すと、少し小さな声でそう私に話す夏くん。
「勉強出来ない私が悪いんだけどね…」
背の高い夏くんを座りながら見上げるのって結構大変かも。
「何の教科の補習なの?」
「数学…」
「数学…ってことは、山田先生?」
山田先生は、私のクラスの数学担当の先生だ。
「ううん、諸星先生」
「え、諸星先生?」
どうして?と言うように聞き返された。
もちろん、普通なら山田先生が担当するはずだ。
「うん。山田先生は放課後空いてなかったんだって」
「へぇ」
なんだか少しだけ夏くんの顔が曇ったような気がした。