イジワル御曹司のギャップに参ってます!
三十分を待たずして、プレゼンの結果が出た。
壇上に就いたこの場における最高権力者、小野田部長が静かに挨拶を始める。

「今日は未来を感じさせる企画がたくさん登場した。実に有益な時間だったよ。珍しく眠気を忘れていた」

ははは、と会議室に笑い声が漏れる。

「この優秀な企画をこの場で終わらせてしまうのはもったいない。
そこで、だ。特に秀でた二つの企画を実際にクライアントの元へ持って行き、直接ジャッジしてもらおうと思う」

小野田部長の視線が、私の方を向いて頷いた。

「朱石くんと、それから――」

そのまま視線が流れて、正面の男の元へ注がれる。

「――氷川くん。
この二人の企画のコンセプトは正反対だ。どちらが良いか、クライアントの好みに委ねるとしよう。
君たちには、クライアントの元でもう一度プレゼンを行ってもらう。そこで改めて検討しよう。いいね」

かくして。
私たちの勝敗は、先延ばしにされたのだった。
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