イジワル御曹司のギャップに参ってます!
再び黙って考え込んでしまった私に、市ヶ谷くんがちょっと困ったように説明を付け加えた。

「付き合ってたのは、もう三年近く前の話らしいです。青山さんが入社した年って言ってたかな。
すぐに別れたらしくって、別れた理由までは言ってなかったけれど、あの調子じゃあ青山さん、引きずってるみたいですね」

氷川の腕に寄り添って満足そうにしていた青山さんを思い出す。
感情を表に出さないあの子が、氷川の隣にいるときはあんなにも安らかな顔をするのだ。
どうして気付かなかったのだろう、私は。
どう考えても、青山さんは氷川のことが大好きじゃないか。

はっきりとした物言いをする氷川が、青山さんに対して拒絶を示さない――それはきっと、受け入れたことを意味するのだろう。

じゃあ『流星』は？
『流星』にとっても、青山さんは大切な存在なのだろうか？

思わず、フッと自分で吹き出してしまった。
考えるまでもない。なんだかんだ言ったって、二人は同一人物なのだから。心はひとつのはずだから。


だったら何故。

あのとき流星は、私を抱きしめたりしたんだろう。
キスなんか――したんだろう。
< 114 / 227 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop