イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「あ! 二人が戻ってきましたよ」

少し距離を置いたところ、人ごみの隙間から、『彼』と青山さんが歩いてくるのが見えた。
向こうもこちらの姿を見つけたようで、私たちへ向かって一直線に歩いてくる。
二人の姿が近づいてきたところで、あれが『氷川』だということがはっきりと分かった。
ちゃんと眼鏡をかけているし、難しい表情で唇を引き結んでいる。

そして――相変わらず二人の腕はしっかりと絡まっていた。
氷川は、青山さんが腕を絡めやすいように少しだけ自分の腕を浮かせてやっているようだった。
気遣うように、ときたま氷川は青山さんの方へ視線を下げる。
いつも通りの冷たくて鋭い視線の中に、心なしか、優しさのようなものが見えた。

やだ。

二人が腕を組んでいるのを見て、今日初めて、そう思った。

どうしてだろう。理由なんてよくわからない。
けれど――なんだかすごく悔しくて、悲しかった。

二人の腕を引き裂いてやりたい衝動に駆られて、私はギュッと自分の腕を握りしめる。

どうしちゃったんだろう私は。


「お待たせしてすみませんでした」

私たちの元に帰ってきた青山さんが、恭しく頭を下げる。

「大丈夫ですよ。こっちもポテト食べながらのんびり待ってたんで。あ、これ、食べてみます? キャラメル味なんですよ」

市ヶ谷くんにポテトを勧められた青山さんは「……キャラメルのポテトですか……?」訝し気な顔で覗き込む。

その間に私がちらりと氷川を見やると、視線に気が付いたのか、彼も私の方へ視線を向けた。
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