イジワル御曹司のギャップに参ってます!
部長や課長等の役職者の席は、部内を見渡せる場所、フロアの一番奥にある。
全体を監視下に置き、かつ、全社員に呼びかけやすい配置。朝礼でいうところの校長先生のポジションだ。
ここから発せられる声は、全社員の元へ届く。
つまり、課長の怒鳴り声は部内全体に響り渡り、私たちは晒し者というわけだ。


フロア全体が気まずそうに伏せている。誰も庇い立てなどしない。
皆一様に黙ってこの粛清が終わるのを待っていた。
が。


「お言葉ですが、課長」


平山課長の怒りの独壇場に一石を投じたのは、私と市ヶ谷くんのどちらでもない。

寒色をまとう長身の男性がゆっくりと近づいてきて、私の横に立った。
氷川だ。

「二人へのお怒りはごもっともですが、まずは事の対処を考えなければ」

氷川の姿を見た平山課長が、少しだけ冷静な顔になった。

「ああ、氷川くんか。すまないね。巻き込んでしまって」

平山課長が額に手を置き、ふるふると首を横に振りながら席に着く。


先ほどとはうって変わって、冷静な空気が周囲を包み込む。
平山課長のお気に入りの氷川が出てきたことにより、一旦場が収まった。


突然しゃしゃり出てきた氷川、一体どういうつもりなんだろう……?
私は横目で睨むけれど、当の本人は気付いているのかいないのか、私の方を見ようともしない。
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