イジワル御曹司のギャップに参ってます!
氷川は平山課長へ向かって、淡々とした口調で提案する。

「至急資材を手配しましょう。突発の対応が可能な業者をいくつかピックアップしておきます」

「それができれば苦労しないよ氷川くん。
探している資材はその辺に出回っているものと訳が違う。特注品なんだ」

「融通の効く業者に何件か当てがあります。リストアップして市ヶ谷くんに渡しましょう」

氷川が市ヶ谷くんの方に目を向けた。

「頼めるね。市ヶ谷くん」

「は、はい……」

戸惑い混じりに答える市ヶ谷くん。彼もこの状況を訝し気に思っているようだ。

氷川が再び部長に向き直り、顎に手を当てながら静かに呟く。

「これが無理なようであれば、特注品は諦めて一般の資材を使った方がよいでしょう。
遅れを引きずるよりは、妥協してでもこの場で収めてしまった方がリスクを軽減できます。
後々何か起きたときに、クライアントに攻め入る隙を与えることになってしまいますから」

「うむ。君の言う通りだ。やむを得んな」

あっさりと氷川の意見に賛同する平山課長。

また『リスク』?
なんなんだこの保守派たちは。
トラブルを避けることよりも、クライアントの要望に応えることの方が大事じゃないのか。
妥協? 冗談じゃない。
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