イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「どうやら『星宝Lilia』の広報担当と、『ジュエルコスメ』の関係者が密な関係らしくてですねー。
コラボの件が正規じゃないルートで『ジュエルコスメ』社長の耳に入っちゃったみたいなんですよー。
いやー、俺も、一応口留めしといたんすけどね。まさかあの人の愛人が『ジュエルコスメ』の社長秘書だったとはなー。世間て狭いですねー」

まるで他人事みたいに失笑する若部さん。
一方の私は、状況を飲み込んで、青くなっていた。

つまり、こういうことだ。
昨日の午前中、私は『ジュエルコスメ』広報マネージャ相模氏にコラボレーション企画の件を話した。
本来は、相模氏から社長まで情報が上がり、事の是非を問うはずだった。
が、相模氏が情報を上げる前に、社長は違う経路で情報を得てしまったのだ。
社長秘書という非正規のルートから。

社長秘書が愛人から聞かされた、商談でもなんでもない噂話レベルの情報。きっと脚色されていたに違いない。
『星宝Lilia』が『ジュエルコスメ』の二十周年アニバーサリー企画を乗っ取る――そんなような内容だったのではないだろうか。

そりゃあ、社長も寝耳に水、怒り狂うのも無理はない。

「誤解です! 話せば分かってもらえます!」

「私もそう社長に説明したのだがね。あまりの激高ぶりに取り付く島もなかったのだよ」

小野田部長は沈痛な面持ちで腕を組む。
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