イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「とりあえず、状況は理解した。朱石くんと氷川くんは、一旦席へ戻りなさい。あとは私と営業でなんとかする」

なんとかする――きっと謝罪に行くということだろう。

「私も行かせてください!」

「いや、君が行くと事態がややこしくなる。ここは私たちに任せて待機していなさい」

「ですが、こうなった責任は、私にありますから――」

「朱石くん」

小野田部長がぴしゃりと私の弁明を制した。
穏やかな彼のイメージを覆す、今までに見せたことのない厳しい表情。
数多の修羅場をくぐり抜けて鍛え抜かれたその顔で、私に苦言を呈する。


「もはや、担当者レベルがどうこうできる問題ではなくなってしまったんだ。
そもそも、この案件自体が消滅しようとしている。損失は計り知れない。
熱意溢れる君にこんなことを言うのは酷かもしれないが――
――迂闊なやり方を反省し、それなりの覚悟をしていて欲しい」

「それなりの――覚悟とは――」

「プロジェクトを離れ、謹慎する、ということだ」


事の重大さに気が付いて、蒼白になった私に、若部さんは「大丈夫大丈夫ー。俺たちがなんとかしてくるからさっ♪」そんな軽口を叩く。

だが、小野田部長の表情を見る限り、大丈夫だとは全く思えなかった。
小野田部長は、これ以上私に視線を合わせることはなく、若部さんを連れ立って会議室を出て行ってしまった。
廊下の外で、二人が難しい顔をして話し込んでいるのが一瞬だけ見えた。

先ほどまでヘラヘラしていた若部さんの顔つきが一転、苦渋に満ちている。
ひょっとして、さっきの能天気な態度は、若輩者である私たちへの気遣いなのだろうか。
事はもっともっと、ずっと深刻なのかもしれない。
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