イジワル御曹司のギャップに参ってます!
ずっと。
言いたくても言えなかった言葉を。
今さら。
本当に今さら。

やっと口に出せたのに、嬉しくなんか全然なくて。

それどころか。
目の前の氷川の、なんとも形容できない表情が、頭の中にこびりついて。
これから先、私の心をずっと苦しめることになるとは。


私は会議室から飛び出した。
取り敢えず、誰もいない場所へ行きたかった。


廊下の奥にある非常階段の扉、誰も寄り付くことのないその場所に隠れて、私はひとり、嗚咽を漏らした。

自分を情けないと感じるほどに涙が溢れて止まらなくて。
こんな時に限って、『流星』の柔らかな笑顔が恋しくて仕方がなくて。

彼だったら、こんな無茶苦茶な私をそっと抱きしめてくれるに違いないのに。
あれ、おかしいな。たった今、彼に酷い言葉を浴びせてきたばかりじゃないか。

もう二度と触れないで、って、言ってきたばかりなのに。


どうして今さら。
大好きだっただなんて、気付いてしまうのだろう。


ひんやりとした壁に背をつけながら、後悔の止まらない身体は熱くて仕方がなくて。
だんだんと膝に力を入れる気力もなくなって、床の上にごろんとみっともなく身体を転がした。
流れる涙が、こめかみを伝って、耳をくすぐる。
うざったくてゴロゴロと身体をのたうち回らせながら。
それでも私の心は、一向に楽になる気配が見当たらなかった。
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