イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「ちょっと待ってください!」

大きな声で意を唱えた私に、周囲の視線が集まった。

「この資材は今回のコンセプトの核です!
これを妥協してしまっては、今回のプロジェクトは……失敗ではないかもしれませんが、成功ともいかないでしょう!
業者に確認したところ、今日は無理でも、五日後には改めて納品できるとのことです。
ここは待ってみてはいかがでしょうか!
五日分の遅れは、今後取り返します」

私の言葉に氷川が冷ややかな瞳をした。

「五日分の遅延が、一体どれだけの損失に繋がるとあなたは思っているんですか?」

私はうっと息を飲む。
五日分遅れるということは、単純に言うと、プロジェクトに関わる現場関係者全ての人件費が五日分増えるということで。
人件費だけじゃない。機材のレンタルや、場所代、追加料金、キャンセル料等々、領収書の山に追われる地獄は、味わったことのある者にしか分からない。
それだけで何百万、何千万、それ以上に膨れ上がることもある。大赤字だ。
何より一番痛いのは、顧客の信頼が損なわれるということ。


でも。

「リカバリ、してみせます」

百パーセントできるなんて言えない。が、ここは引いてはいけないところだ。
このプロジェクトを大団円で終わらせるために。
< 15 / 227 >

この作品をシェア

pagetop