イジワル御曹司のギャップに参ってます!
ひとつ、小さく咳払いをして、氷川は続きを話し始める。

「プロジェクトはひとまず継続するそうです。
ですが、『ジュエルコスメ』側の不信感が、まだ根強く残っていて……」

論理的な彼が、結論を先に伝えず、慮っている。彼らしくない。
よっぽど私に伝えづらいことなんだろう。だいたい、内容の予測がついた。

「大丈夫。言って」

「……」

「いいから早く、教えて」

「……朱石さんを、企画から外すそうです」

目を伏せながら、氷川は言った。

なんだ、予想通りじゃないか。
会社的に言えば、その程度で済んだのだから、御の字だろう。
私だって、肩の荷が下りてホッとした。私のせいでプロジェクトが無くなったりしなくてよかった。

私が全てを失ったことには変わりないけれど。

小さく自嘲して、唇を噛む。

「で、次のリーダーには誰がなるの?」

この質問も、聞くまでもなく予想がついていた。
ナンバー2がリーダーへ繰り上がるとするならば、目の前にいるこの男こそが次のリーダーということになるだろう。

氷川は申し訳なさそうにして、言い淀んだ。
さすがに自分があなたの代わりに出世しましたなんて、言いづらいらしい。
彼らしくない気遣いだ。そんな感情、氷川にもあったんだ。

でも、せっかくだから、ちょっと意地悪をしてやろう。
言いたくないであろうことを、その口で言わせてやろう。
ああ、そうだ。単なる腹いせだ。
きっと、性格の悪い女だって、救いようのないやつだって、そう思うに違いない。
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