イジワル御曹司のギャップに参ってます!
頭が真っ白になった。
違う、と叫びたくなったのはどうしてだろう。
どちらにせよ、声は出なかったのだけれど。

氷川は私たちの様子を眺めたあと、少しだけ顔をしかめて、口を開いた。

「……一応、心配になってきてみたのですが。
あなたって人は……」

呟いて、ゆっくりと眼鏡を外した。

「本当に――酷い人だ……」

『流星』の、人を吸い付けるような綺麗な瞳。それがすうっと細くなって、口元に柔らかな笑みが浮かぶ。
でもその奥に見えたものは――
嘆きと、哀しみ。


「あ……の……」


私は必死に言い訳を探していた。
だが――いったい何を弁解すればいいのだろう。
流星の姿を目の前にして、身体はよりいっそう動かないし、市ヶ谷くんの腕は振りほどけない。
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