イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「ちょっと待って!」


気が付くと、叫んでいた。

市ヶ谷くんも、流星も、その場に存在する何もかもが私の声に驚いて静まり返った。

「……そんなの、許さない……」

ふつふつと。
今まで消えていた心の炎が、再びくすぶり始めたのを感じた。

アイデアを振り絞り、必死に創り出した企画だ。
他に埋もれないように、誰もの心に残るように、この世界で、たった一つの素晴らしいものになるように、試行錯誤して、時間と手間をかけて、考え抜いた末に出来上がった企画なんだ。

それを、無難に、とか、当たり障りなく、とか、どうせ二、三年経てば忘れられる、とか……
そんなの、黙って見ていられるわけがない。


「そんなの、認めない!」

思わず流星の襟元に掴みかかった。
が、締め上げる前に流星は私の手を受け止める。

「だったら、やることやってみせてよ」

挑発的に見開いた流星の瞳の奥に、輝きが宿る。

「もう万策尽きたの? 違うよね?
俺の『朱石光子』は、こんなことでへこたれる人じゃない。
踏まれても踏まれても、ゴキブリ並みの生命力で這い上がってくる人でしょ?」

「ふざけんじゃないわよ! ゴキブリと一緒にしないで!」

「いつもの威勢が戻ってきた。上等だ」

やっと流星が心から嬉しそうに笑った。
欲しいおもちゃを与えてもらった子どものように、無邪気に、あどけなく、瞳をキラキラさせながら、私の頬を両手で包み込む。

「もっと俺に魅せてよ。誰も止めることのできない、不屈の『朱石光子』を。
誰に文句を言われてもいい。
あなたの理想のままに、走り続けていてよ」
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