イジワル御曹司のギャップに参ってます!
場に沈黙が訪れる。

私の迫力に気圧される平山課長。
何を考えているか分からない氷川。

沈黙を破ったのは氷川だった。

「好きにしてください。私にはそこまであなたに強制をする権利はない」

説得を無駄と悟ったのか、そう言い残し氷川が回れ右をする。
引き下がってくれたことに、私は正直、ホッと胸を撫で下ろしていた。
が、安心したのも束の間、突然歩を止める氷川。

「あなたは先日、私の仕事の仕方が嫌いだとおっしゃいましたね。『気持ちが入っていない』、と」

私たちに背を向けたまま、肩越しに振り返る。

「私も……あなたの仕事の仕方が嫌いです。
全て気合いでどうにかなると考えているような、感情論剥き出しの仕事の仕方は」

突き刺すような鋭い視線で一瞥し、氷川は私の元を去っていった。

心の中にもやもやとしたものが残る。
どう思われてもかまわないと思っていたのだが、面と向かって『嫌い』と言われると、さすがに堪える。

だが何故だろう。去り際の氷川の横顔。
口元が少し綻んでいたような。

怒りと軽蔑、その中に何故か喜びのような表情を見つけてしまって、なんとも複雑な気持ちになった。
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