イジワル御曹司のギャップに参ってます!
翌日の同じ時間。私と流星は再び『ジュエルコスメ』広報マネージャー相模さんの元を訪れた。
今度はちょっとした手土産なんかを用意した。
流星がどこからともなく調達した紙袋。中身は、社長好物の高級佃煮らしい。佃煮が好物だなんて情報、どこから仕入れたのだろう。

だが結果は今日も同じだった。
やんわりとあしらわれ、私たちは帰路につく。
仕方がないから、佃煮だけは「ぜひ社長に」と相模さんの手に押し付けてきた。


「手土産なんて小細工、あの社長、あんまり好きじゃないと思うよ。逆効果じゃないかな?」

帰り道、私と流星は今日の反省と今後の対策を考えていた。
曲がったことは大嫌い、頑固一徹のあの社長が、贈り物で機嫌を良くしてくれるとは思えない。
それどころか、逆上するんじゃないだろうかと、私は考える。

「手土産が大事なんじゃない。毎日謝罪に来ているということを社長へアピールすることが大事なんだ。」

「まぁ、確かにね」私は頷く。

「それと、今日の夜十時、もう一度謝罪に行くよ」

「え!? 夜の十時!?」

私は驚いて目を丸くした。そんな遅い時間にどうするというのだ。
いくらなんでも迷惑だろう。下手したら、相模さんも帰っちゃてるんじゃないだろうか。
ひょっとしてまさか、夜のお店で接待的な……?
疑わしげな目をする私に、流星が呆れた声で言う。

「何想像してるの? 別に変なことはしないから、黙ってついてきなさい」

「は、はぁ」

腑に落ちないまま、私は頷く。
流星のことだから、何かしら考えがあるのだろうけれど。
現に今もこうして謝罪に付き合ってくれている訳だし。きっと何か、現状を打破する奇策があるのだろう。
……たぶん。
< 164 / 227 >

この作品をシェア

pagetop