イジワル御曹司のギャップに参ってます!
私一推しの人気のない場所、廊下の隅にある非常階段。そこで私と青山さんは流星の両側を固め、問い詰めた。
観念した流星が、ため息交じりに渋々口を開く。

「朱石さん。あなた、前に聞きましたよね。『社長の帰宅時間を、どうやって調べたのか』と」

「ええ」

「これが答えです」

「……?」

何を言っているのだろう。意味がよく分からない。
察しのつかない私を見て、流星が躊躇いがちに口を開く。

「秘書課の子と親密になって、情報を聞き出しました」

「「……は?」」

私と青山さんの、苛立ちを含んだ声が重なった。

情報を聞き出すために、女性と親密に……?
もしかして、スパイアクションの映画でよくあるあれか。
機密情報を握る敵方の女性に近づいて、男女の関係にもつれ込み、相手がシャワーでも浴びているうちにこっそり情報を盗み出すという……

まさか現実にそんなことが? 嘘でしょ?


「つまり、情報を吐かせるために、秘書課の子を口説き落としたと言うんですね?」

私の疑問を青山さんが躊躇うことなく口に出した。

「言っておくけど、少し揺さぶっただけだから。身体の関係とかないから」
苦しい言い訳をした流星に

「何を偉そうに、この鬼畜」

青山さんが驚くべき毒舌で突っ込みをいれて、ちょっとびっくりした。
が、概ね私も賛成だ。「最低ね」と一言添える。
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