イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「楽しく食事して酒を交わして話をしただけだ。責められるようなことは何もしていないよ」

開き直った流星だったが

「気のある素振りで騙したんですよね」

「流し目使って『綺麗だね』とか『可愛いね』とか言ったんじゃないの?」

口々に反論した私たちに、何も言い返すことができなくなった。


「だいたい、秘書課の子なんて、どうやって知り合ったのよ」
呆れかえった私の問いかけに

「それはっ! あなたが悪い!」
突然むきになる流星。
「あなたが勝手に俺の名前を出して、営業部の若部さんと合コンに行く約束なんてしたんだろう!」

「え」

そういえば、若部さんに『星宝Lilia』への仲介を頼んだ時に、交換条件として氷川を合コンに誘うって約束したんだっけ。
私が知らない間に、流星はちゃんと約束を果たしてくれていたようだ。
嬉しいような、悲しいような……いや、合コンで女の子を口説き落とす流星の姿を想像すると、九割方腹立たしい。

だが気が付くと流星と青山さんの冷ややかな目が私へ注がれていて、思わず目を逸らしてごまかしたのだった。


ふと、青山さんが真面目な顔になって、流星へ問う。

「それは、村正さんのやり口ですね」

不意に飛び出た名前にハッと顔を上げた。
かつて、流星が付き従っていたという、今は亡き伝説の人。
青山さんは、流星の前でその名前を出すなと私へ念を押したはずなのに、彼女自身がその禁を破った。
流星の方に視線をやると、苦虫を噛み潰したような顔で沈黙している。
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