イジワル御曹司のギャップに参ってます!
第二章 眼鏡の下の意地悪な瞳
その日は朝からどんよりとした雲に覆われていて、なんとも気持ちの悪い空色だった。
まだ雨は降っていない。
重たいプレゼンの資料を肩に担ぎ早足で歩きながら、なんとか目的地に辿り着くまでこの曇り空が保ってくれるようにと祈った。
私――朱石光子と、氷川流星、小野田部長、平山課長は、いざ勝負のプレゼンを仕掛けるべく、クライアント先である大手化粧品メーカー『ジュエルコスメ』本社へと向かっていた。
昨日のトラブルは、終日かけて対応に当たったこともあり、なんとか事なきを得た。
それもこれも、氷川がくれたリストがあったおかげ――
彼に助けられたというのは少々癪だけれど、結果的にそうなのだから、お礼を言わないわけにはいかない。
「……昨日はありがとう。助かった」
少し前を歩いている氷川の元へ、私は駆け寄った。
「無事納入する目途が立って、一安心、ってところかな」
笑顔(もちろん営業スマイルだが)を浮かべた私に対する氷川の反応は、冷ややかなものだった。
不愉快そうに一瞥して「……徹夜だったそうですね」顔をしかめる。
「ええ」
はは、と私は失笑する。
「業者は直ぐに見つかったんだけれど、契約と発注に時間がかかって……ね。なにしろ、特注品だから。
直接業者に赴いて話を通していたら、結果的に夜中になってしまって。
でも、業者側が徹夜で対応してくれたおかげで、今日の夕方には納入できるそうよ」
まだ雨は降っていない。
重たいプレゼンの資料を肩に担ぎ早足で歩きながら、なんとか目的地に辿り着くまでこの曇り空が保ってくれるようにと祈った。
私――朱石光子と、氷川流星、小野田部長、平山課長は、いざ勝負のプレゼンを仕掛けるべく、クライアント先である大手化粧品メーカー『ジュエルコスメ』本社へと向かっていた。
昨日のトラブルは、終日かけて対応に当たったこともあり、なんとか事なきを得た。
それもこれも、氷川がくれたリストがあったおかげ――
彼に助けられたというのは少々癪だけれど、結果的にそうなのだから、お礼を言わないわけにはいかない。
「……昨日はありがとう。助かった」
少し前を歩いている氷川の元へ、私は駆け寄った。
「無事納入する目途が立って、一安心、ってところかな」
笑顔(もちろん営業スマイルだが)を浮かべた私に対する氷川の反応は、冷ややかなものだった。
不愉快そうに一瞥して「……徹夜だったそうですね」顔をしかめる。
「ええ」
はは、と私は失笑する。
「業者は直ぐに見つかったんだけれど、契約と発注に時間がかかって……ね。なにしろ、特注品だから。
直接業者に赴いて話を通していたら、結果的に夜中になってしまって。
でも、業者側が徹夜で対応してくれたおかげで、今日の夕方には納入できるそうよ」