イジワル御曹司のギャップに参ってます!
そのとき。
真っ黒な高級車が、ゆっくりと路肩に停止する。
重苦しい後部座席のドアが開き、最初に中から姿を現したのは、まだ若くて美しい女性だった。
ピシッとしたスーツを着こなすも、仕草はしなやかで女性的。大和撫子といった風情を醸し出している。
きっと秘書だろうな、と私は思った。
秘書は大きな黒い傘を広げ、後部座席の入り口を守るように傘をかざした。
その傘の下、後部座席の入り口から姿を現したのは、高級そうなダブルのスーツを身に纏った、中肉中背の初老の男。
――新藤社長――
傘を持つ秘書を斜め後ろに従えて、社長はどっしりとした緩慢な動きで、私の元へ歩いてきた。
顔を上げた私の目に映った彼の表情は、予想通り、憤然としたものだった。
「毎日毎日、馬鹿の一つ覚えのように頭を下げて。この程度で許されると思っているのか」
低くしゃがれた、けれどよく通る声が闇夜に響き渡り、私の身体を震わせた。
「……気付いていただけていましたか」
「気付かれるよう、真っ白な服がライトで反射する位置を計算してわざと立っていたのだろう。全く、小賢しい」
忌々しく吐き捨てて、汚いものでも見るかのように視線を注ぐ。
「好物の品を送れば気を良くするとでも思ったか。そういうずる賢い考えが、私は一番嫌いなんだ。
特に、今日の品は何だ! 貴様にそんなことを心配される覚えはない! 厚かましいわ!」
やはり怒らせてしまった。が、それこそが私の目的である。
真っ黒な高級車が、ゆっくりと路肩に停止する。
重苦しい後部座席のドアが開き、最初に中から姿を現したのは、まだ若くて美しい女性だった。
ピシッとしたスーツを着こなすも、仕草はしなやかで女性的。大和撫子といった風情を醸し出している。
きっと秘書だろうな、と私は思った。
秘書は大きな黒い傘を広げ、後部座席の入り口を守るように傘をかざした。
その傘の下、後部座席の入り口から姿を現したのは、高級そうなダブルのスーツを身に纏った、中肉中背の初老の男。
――新藤社長――
傘を持つ秘書を斜め後ろに従えて、社長はどっしりとした緩慢な動きで、私の元へ歩いてきた。
顔を上げた私の目に映った彼の表情は、予想通り、憤然としたものだった。
「毎日毎日、馬鹿の一つ覚えのように頭を下げて。この程度で許されると思っているのか」
低くしゃがれた、けれどよく通る声が闇夜に響き渡り、私の身体を震わせた。
「……気付いていただけていましたか」
「気付かれるよう、真っ白な服がライトで反射する位置を計算してわざと立っていたのだろう。全く、小賢しい」
忌々しく吐き捨てて、汚いものでも見るかのように視線を注ぐ。
「好物の品を送れば気を良くするとでも思ったか。そういうずる賢い考えが、私は一番嫌いなんだ。
特に、今日の品は何だ! 貴様にそんなことを心配される覚えはない! 厚かましいわ!」
やはり怒らせてしまった。が、それこそが私の目的である。