イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「以前、雑誌のインタビューを拝見したことがあります。新藤社長はこう仰っていました。
『ジュエルコスメの化粧品は、顔を彩るだけではない。持ち主の人生そのものを彩るのだ』と。
だからこそ、商品の品質だけではない、パッケージにもこだわって、使う者の心をわくわくさせるような商品を開発している」

『ジュエルコスメ』の商品のパッケージは、他社と比べても圧倒的に華やかだ。
例えば、パウダーファンデーションのコンパクト。表面には光を受けて幾色にも輝くビーズが施され、キラキラと眩しいそれは社名の通り高価な宝石を思わせる。

「狙い通り、その華やかな見た目が二十代、三十代の心を掴み、『ジュエルコスメ』の名は若い世代の間で広く浸透しました。知らないものはいない、というくらいに。
若者の毎朝のメイクに、日常生活に、欠かせない存在としての地位を確立しました」

「口上はいい。さっさと本題を言わんかね」

待ちきれなくなった社長が、結論を急かす。
私はリップサービスから一転、攻撃の姿勢に入る。

「ですが、浸透したのは日常生活のみ。あくまで、普段使いの域を超えるものではありません」

失礼を承知で、はっきりと宣言する。
社長の眉間に皺が寄るのが見えた。

「対して『星宝Lilia』のジュエリーはどうでしょうか。
二十代、三十代に名前が浸透しているという点では同じですが、商品が求められるシーンは全く異なります。
『星宝Lilia』のジュエリーは、普段使いではなく、特別な日のため。
婚約指輪、結婚式の装飾品、記念日の贈り物など、人生の分岐点を司る、一生ものの商品です。
文字通り『人生の彩り』。一生の記憶に残る場面に寄り添う商品です」

私は声を一際大きくした。
失礼を承知で言うのだ。気分を害されても仕方がない。どのみち、これ以上失うものはないのだから、恐れるものなど何もない。

「そして御社『ジュエルコスメ』の化粧品に足りないものは、まさにこれなのです。
『持ち主の人生を彩りたい』と謳っておきながら、特別な日には使ってもらえない、これでは悲しすぎます」
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