イジワル御曹司のギャップに参ってます!
第十章 伝わらない気持ちの伝え方



拾ったタクシーで彼のマンションへと向かい、部屋に着いたそうそう、バスルームへと押し込められた。
前回と同じだ。冷え切った私を早く温めてやらなければという、彼の配慮。
相変わらずサイズが大き過ぎる彼の服に着替えリビングへ行くと、私服で首からタオルを下げた彼が温かい紅茶と共に出迎えてくれた。

「流星もシャワー浴びておいでよ」

「俺は後でいいよ」

流星は湯気の立つマグカップを二つ、ソファの前のローテーブルへ置いた。
平然とした様子の彼だけど、長いこと雨に打たれていたのだ、冷え切っているに違いない。
髪だってまだ濡れていてどことなく寒そうだ。

「風邪引いちゃうから、ちゃんと温まってきて!」

私がソファに腰かけながら叱ると、ふっと笑った彼は、私の右隣に腰を下した。
腕と足を組んで悠然と座ったあと、身体をきゅっと私の方へ寄せて、二人の距離をなしにする。

「俺は、せっかくなら違う方法で温めて欲しいかな」

私の耳元に顔を寄せて、流星が呟いた。

違う方法? 何それ、どういう意味?
黙ったまま見つめ返すと、流星はちょっと困った顔をした。

「あんまりからかったら、また前みたいに泣いちゃうかな?」

「……からかってるの?」

「本気と受け取ってもらっても、かまわないけど」

流星は私の肩を抱き、自らの懐へと招き寄せた。
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