イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「でも、あなたを守りたいだなんて、俺はおこがましかったのかもしれない。
結局あなたは俺なんかいなくても、一人で全て解決させてしまった」

流星が私から身体を離し、瞳を切なくした。
まるで決して手の届くことのない遠く離れた星でも眺めるかのように。

「それは違うよ」

離れてしまった距離を埋めようと、私は彼の服の袖口を掴んだ。
自分からそばに行くことなんてとてもできないから、せめてこっちへ来て欲しいという、精一杯のアピールだった。

「流星が叱ってくれたから、私は立ち直れた……」

「こんなところで挫折されちゃ、俺が困るからね」

「流星がいてくれたから、頑張れたの」

「俺はアドバイスをしたに過ぎないよ」

「……」

もどかしい。
私はこれ以上の表現の仕方を知らない。
男性に触れるのが怖くて自分から距離を置いて生きてきた私には、何と言ったら伝わるのか、どんな態度で示せばいいか、分からない。
すでに私の中の彼は、仕事の関係に収まる存在じゃないというのに。

いつだって彼が頭の片隅にいて、ときには私を翻弄し、ときには力を与えてくれる。
気が付いたら、彼のことばかり考えている自分がいた。
彼が別の女性と一緒にいると、心が浮足立ってしまう。
彼の心のベクトルが、誰に向かっているのか気になって仕方がない。

触れられると動けなくなってしまうのは、嬉しいからだ。
それがただの同僚に対する感情ではないことを、私は薄々感づいている。
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