イジワル御曹司のギャップに参ってます!
伸ばした手に力を込めると、不意に彼の手の甲に触れてしまって、その感触とあまりの冷たさに私はびくりと身体を震わせた。

「冷たい」
驚いて手を引っ込めると
「……いい加減寒くなってきたかな」
流星は鼻をぐすっと鳴らして、首に巻いていたタオルを解いた。

雨水を含んだタオルが重たそうに彼の腕から垂れた。きっと冷たいのを我慢していたに違いない。

「風邪を引いても恰好悪いし、あなたの言う通り、おとなしくシャワーを浴びてくるよ」

そう言ってソファから立ち上がると、柔らかい笑みを残して、バスルームへ行ってしまった。


流星を失ったリビング。
辺りには、ところどころに彼の存在していた痕跡が残っている。
机の上に置き去りにされているチラシと公共料金の領収書(たぶんポストから取ってきてそのままなのだろう)とか、ソファの上に転がったリモコン(ここからテレビを眺めていたんだろう)とか。
流星の足跡の軌跡全て、何故だかとっても愛おしく感じられる。

思わずソファを立って、周囲を探索し始めてしまった。
行儀が悪いことだとは分かっているが、掴みどころのない彼の手がかりを手繰ってしまう――

なんだかまるで、ストーカーみたいじゃないか。
だめだめ、あんまりジロジロ眺めちゃ。

自分を戒めてソファの上へ戻ろうとしたとき。
ふと寝室の電気がつけっぱなしになっていることに気付く。
彼が私服に着替えたときにこの部屋を使ったのだろう。
電気を消そうと近づくと、パソコンデスクの上に、見知ったものがあった。
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