イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「ごめん、つい……でもこれって」

「ああ、それは……俺の最終手段」

床にばら撒いてしまった資料を拾いながら、やれやれとため息をつく流星。

「あなたが謝罪を失敗したら、俺が企画の重要性を社長に説明して、なんとか実現させようかと――
いろいろ動いてはいたんだけれど、まぁ無駄になってくれてよかった」

「……そこまで考えてくれてたんだ」

胸がいっぱいっていうのは、こういうことを言うのかもしれないと、この歳になって今さらながらに思った。
最初は散々言ってたくせに、結局は親身に考えてくれている。
嬉しいと同時に、どうしてここまでしてくれるのか、不思議なくらいだった。

「ねぇ。どうしてこんなに親切にしてくれるの? あなたにメリットなんて何もないのに」

資料を集め終えた私が彼を見上げると、彼は肩を竦めておどけたような顔をした。

「親切かどうかなんて、分からないでしょ。もしかしたら、あなたに恩を売って法外な謝礼を要求するかもしれないよ?」

意地悪く笑う彼に、私はまさかと思いながらも、ちょっとドキリとする。

「法外な謝礼って……いくらくらい?」

「お金とは限らないんじゃない?」
彼が目の前にきて、指先で私の顎をすくった。
「身体で払えって言うかもしれないよ? 何しろ、情報を得るために敵の女性を口説き落とす男だからね、俺は」
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