イジワル御曹司のギャップに参ってます!
突然縮まった顔と顔との距離に息を詰まらせながらも、私は恐る恐るずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あの、秘書課の女性とは……結局どうなったんですか?」

「どうって?」

「……その……食べられちゃうかも、とか、言っていたから」

流星の口元が意地悪さを増す。返答に困る私で遊んでいるようだ。

「寝たか、って聞いてる?」

真っ赤になる私を嘲笑うかのように、彼は瞳を細くした。私から手を離し、ベッドに腰かけて足を組む。

「寝たよ」

「……」

サッと全身から血の気が引くのを感じた。
一瞬目の前が真っ暗になって、それでもなんとか倒れないように踏ん張った。
鼓動が早くなる。胸の奥が痛い。目頭がツンと熱くなる。

そんな私の様子をしばらく眺めていた彼が、ゆっくりと口を開いた。

「……冗談。何にもしてないよ。驚いた?」

「……」

今まで何度も、彼に対して、苛立ちを感じてきたけれど。
こんなにも殴ってやりたいと思ったことは、初めてだ。

「最っ低。その冗談笑えない。全然面白くない」

「……あれ。怒っちゃった」

本気でこめかみをぴくぴく言わせている私を、流星はおっかなびっくり覗き込む。
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