イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「俺だって、そこまで酷い奴じゃないよ?」

「全然説得力ない。あなたってすぐ女性に手を出すし。私にだっていろいろしたの、忘れてるんでしょ」

流星にとっては、ただのスキンシップの一環なのかもしれない。
あるいは、私をおもちゃにして遊んでいるだけなのかも。
けれど、私は彼に触れられたひとつひとつを覚えている。
襲われそうになったこと、抱きしめられたこと、手を繋いだこと、頭を撫でられたこと、頬に触れられたこと。
それから、口づけをしたことだって、あったのに。

私にとってはオオゴトなのに、彼の中では何事もなかったかのようになっていることが、すごく悔しい。

「忘れてないよ」

彼が私の手を引いて、自分の座るベッドの横へと座らせた。

「誰にでもそんなことしないよ」

「じゃあ青山さんとは!?」

頭に血が昇った私は、ついつい彼を責め立ててしまう。
青山さんとのことは、今、掘り返すことじゃないのに。口に出してから後悔した。

「……その、付き合ってたんでしょう……?」

「……まぁ」
流星はちょっと言いにくそうに、難しい顔をした。
「そうだよ。何もなかったとは言わない」

聞いたことを本気で後悔した。
当たり前じゃないか、恋人同士だったんだから、何もないはずがないのに。こんなこと確かめて、どうするんだ。
私はうつむいてぎゅっと唇を結ぶ。
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