イジワル御曹司のギャップに参ってます!
そして決戦のとき。
化粧品メーカー『ジュエルコスメ』が抱える地上四十階にもなる高層ビル。
その上層階にある巨大な会議場に私たちは通された。
はっきり言って、異例の対応である。
過去に幾度となく取引を重ねており、私も参加させてもらったことがあるのだが、下層階の、テーブルと椅子が数対置かれた小さな応接室がせいぜいだった。
かつてこれほどまでに大規模な会場を用意してもらったことはない。
ましてや、高層階は企業の中枢であり、権力の象徴――
クライアントがこの一つの打ち合わせに、どれほどの重要性を感じているかが、会場に現れている。
やがて会議場に続々と『ジュエルコスメ』の社員たちが入ってきた。
私と同世代くらいの若い社員が両脇を固め、小野田部長と同じくらい年季の入った中年男女――おそらくかなりの役職だろう――が中央を抜かして右と左に座った。
その真ん中の空いたスペースに入ってきたのは――
何度か写真で見たことがある。
この『ジュエルコスメ』の最高責任者。
新藤社長――
白髪と深い皺が刻まれた、とうに定年を超えているであろう老君。
それでも『まだまだ現役だ!』といわんばかりにぎらついた顔をしている。
難しい表情と意思の強そうな瞳を携えて、会議場の中央に腰を据える。
それを目にした私たち『美倉広告企画』陣営は、動揺していた。
大手企業のたかだか一商品の企画会議。
通常であれば担当部長と営業、マネージャ、その他下っ端数名が参加するような会議であるはずなのだが。
社長が直々にお出ましするとは。
設立二十周年の記念CM――それほどまでに気合いが入っているということか。
両手を口元で組んだ新藤社長が、威圧感たっぷりのよく通る声で、始まりのコングを鳴らした。
「はじめるとしよう」
化粧品メーカー『ジュエルコスメ』が抱える地上四十階にもなる高層ビル。
その上層階にある巨大な会議場に私たちは通された。
はっきり言って、異例の対応である。
過去に幾度となく取引を重ねており、私も参加させてもらったことがあるのだが、下層階の、テーブルと椅子が数対置かれた小さな応接室がせいぜいだった。
かつてこれほどまでに大規模な会場を用意してもらったことはない。
ましてや、高層階は企業の中枢であり、権力の象徴――
クライアントがこの一つの打ち合わせに、どれほどの重要性を感じているかが、会場に現れている。
やがて会議場に続々と『ジュエルコスメ』の社員たちが入ってきた。
私と同世代くらいの若い社員が両脇を固め、小野田部長と同じくらい年季の入った中年男女――おそらくかなりの役職だろう――が中央を抜かして右と左に座った。
その真ん中の空いたスペースに入ってきたのは――
何度か写真で見たことがある。
この『ジュエルコスメ』の最高責任者。
新藤社長――
白髪と深い皺が刻まれた、とうに定年を超えているであろう老君。
それでも『まだまだ現役だ!』といわんばかりにぎらついた顔をしている。
難しい表情と意思の強そうな瞳を携えて、会議場の中央に腰を据える。
それを目にした私たち『美倉広告企画』陣営は、動揺していた。
大手企業のたかだか一商品の企画会議。
通常であれば担当部長と営業、マネージャ、その他下っ端数名が参加するような会議であるはずなのだが。
社長が直々にお出ましするとは。
設立二十周年の記念CM――それほどまでに気合いが入っているということか。
両手を口元で組んだ新藤社長が、威圧感たっぷりのよく通る声で、始まりのコングを鳴らした。
「はじめるとしよう」