イジワル御曹司のギャップに参ってます!
会議室には、小さな横長の机に、席が六つ。
小野田部長が部屋の奥側の中央へ腰かけたのを確認して、私はその正面に座った。
腰を落ち着けた小野田部長が、組んだ腕を机の上に置いて、ゆっくりと口を開く。

「突然だが、次の人事で、朱石くんにマネージャーのポジションを任せようと思う」

「えっ!?」

昇進――不意を突かれて思わず間抜けな声を出してしまう。

確かに流星と私、どちらかを昇進させるという話だったが、今回のプロジェクトで大きな失敗を犯してしまった私は、現状こそ立て直せたとはいえ、出世だなんて論外だと思っていた。
しかもマネージャーだなんて、今よりも2つも上のランクじゃないか。

「あの……何故、私が……?」

「不思議かね?」

小野田部長はポカンとする私を面白そうに眺めて笑った。

「朱石くんは、一度顧客をひどく怒らせたね。あれは酷かった。契約破棄寸前だった。
だが、そこからの巻き返しは実に見事だった。
相手方の社長を納得させ、再びチームリーダーへと返り咲いた。
それはなかなかできることではない。
その実績を考慮して、君にマネージャーの任をお願いしようと思う」

よくやってくれた、そう言って誇らしげに私を褒めたたえる小野田部長。

嬉しい反面、正直複雑でもあった。
それは本当に私の実力なのだろうか。私は、小野田部長の褒め言葉に値する人間なのだろうか。
否、私一人では落ち込んで挫折の苦しみに浸るだけで、何の解決策も見い出せなかったではないか。
そこから立て直せたのは、私の力というよりも、流星が私を引っ張り上げてくれたおかげだ。
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