イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「氷川さんは!?」

足早にデスクへ戻ってみると、すでに流星の姿はなく、近くにいた青山さんが「打ち合わせです」と事務的に答えた。
私もこのあと、外出の予定が入っていて、戻るのは午後になるだろう。流星とはすれ違いになってしまいそうだ。
早く会って話をしたかったけれど、はやる気持ちを押さえて渋々諦める。
まぁこんなに近くに各々の自席があるわけだし、嫌でもそのうち顔を合わせるだろう。とりあえず今は目の前の仕事に集中だ。

だが、午後になって私が外出先から帰ってきたとき、流星はすでに別の打ち合わせに行ってしまっていた。
このあと、私の打ち合わせが立て続けに三本。終わるころには陽が傾いていた。

「氷川さんは?」

夕方になり急いでデスクへ戻ってくるも、やはり流星の姿はない。

「外出しました。直帰するそうです」
端的な青山さんの返答に、私はがっくりとうなだれる。

仕方がない。明日にするか。

私が自分の仕事に戻ろうとした、そのとき。

「朱石先輩、緊急でちょっといいですか!?」

市ヶ谷くんが電話を片手に自席から声を張り上げた。
ちょっと緊迫した顔つきで、何かのトラブルが起こっていることは知らされるまでもなく察知することができた。
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