イジワル御曹司のギャップに参ってます!
***


結局トラブル対応に徹夜で当たることになってしまった私は、明け方のまだほとんど人のいないオフィスで、椅子を連ねてベッドを作り、横になっていた。

クライアントが「なんとかしてくれ」の一点張り。説得の余地もなく、一晩中対応方法を模索していたのだ。
道連れになってしまった市ヶ谷くんも、誰もいない会議室に籠って横長のテーブルをベッドに仮眠をとっている。

くたくたの私たちにかまうことなく、容赦なく朝日は昇る。
あと三時間経つ頃には、今は誰もいないこのオフィスも賑やかになり、今日という一日が始まってしまう。

今のうちに休んで眠っておかなくちゃ。

安定感のない椅子のベッドに身体をそわそわさせて、眠りづらいなぁなんて心の中で文句を溢しながら、私はなんとか浅い眠りにつくことができた。



「何をやっているんです。あなたは」

聞き覚えのある低い声が聞こえて、私はゆっくりと目を開けた。
ブラインドの隙間から強い朝日が射し込んでいる。どうやら朝みたいだ。

――朝!?

慌てて時計を見ると七時半。定時まで一時間以上あるせいか、オフィスの中はまだがらんどうで、誰も出社してきてはいないみたいだった。
目の間のただ一人を除いては。
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