イジワル御曹司のギャップに参ってます!
かくして勝負は幕を開け。
赤い下着のジンクスが功を制したのか。
決着はあっさりと着いた。その間、十五分とかからなかった。

誰もが予期していなかった、番狂わせによって。



帰り道、『ジュエルコスメ』本社の巨大ビルを出て駅までの道のりを歩きながら、氷川が小野田部長へ謝罪した。

「申し訳ありません。私の調査不足でした」

いやいや、と小野田部長。
「あの状況は誰にも予測できなかったよ。運が悪かったとしか言えない」

平山課長も、沈痛な面持ちでため息をついた。
「まさか、社長が『合成は嫌だ』の一点張りとはなぁ」

その場の全員が、覇気のない苦笑いを浮かべた。

お年を召した社長であった。失礼を承知で言えばステレオタイプの頑固ジジイである。

氷川の『全面的にCGを使った革新的な一手』が受け入れられるはずもなく。
勝敗はあっさりと、私の『本物ならではのクオリティ重視』案に決した。
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