イジワル御曹司のギャップに参ってます!
その一人が私を見下ろして、呆れた風なため息を溢す。
「また徹夜ですか? 一体何があったんです?」

ぼんやりとした頭を軽く振るいながら、私は椅子で作った超簡易ベッドから身を起こす。
「えと……ちょっとトラブル対応に手間取って……」

「またですか。どうせ今回も当事者ではないんでしょう。そんなもの本人に任せればいいのに。身体がいくらあっても足りませんよ」
相変わらず、冷静沈着なトーンでネチネチとお小言を垂れる彼。
だから、そんなに簡単に割り切れるものではないんだって。
世の中、全て合理的に片付けられると思ったら大間違い――

ん?
て!? ええ!? えええ!?


やっと目が覚めてきて頭の稼働率が八十パーセントくらいに到達したとき、驚くべき事実に気が付いた。
私は目の前のその人物をじっと凝視する。
見えてはいけないものが見えてしまったような――でもそれは紛れもない現実だった。

行き過ぎたまでの敬語、にも関わらず鋭く尖った刃物を思わせる攻撃的な台詞。
機械のように揺るぎのない顔色と、冷徹な態度。

「ひ、氷川さん!?」

「何です?」

鬱陶しそうに答えた『彼』の目元には――

「――眼鏡、なんでかけてるんですか?」

「何か問題が?」

さも当然のごとく答える。
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