イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「そ、そんなことは」

ないと言えるだろうか。そう自問自答して凍り付く。
確かに、以前の私は、落ち度のないように最大限気を張ってやっていた。
ちょっとでも詰めの甘い箇所があれば、氷川が確実にそこを突いてくるからだ、抜け目ないように注力を注ぎ続けてきた。
最近はというと、氷川が味方になってくれたおかげで、揚げ足を取るような敵はいなくなり、細かなところにまで気を配らなくてもなんとかなるようになってしまった。

「……私が少しくらい失敗しても、流星がフォローしてくれてたでしょ?」

「私がいないと一人前の仕事が成り立たないということですか? グレードダウンしてどうするんです」

痛いところを突かれて、うっ、と押し黙る。
私は流星を頼りにしているうちに、いつの間にか彼がいないと何もできなくなってしまっていたということか。
彼の優しさに無意識のうちに、あぐらをかいていたというのか。

自分では気づいていなかった怠慢を指摘され、私は愕然と立ち尽くす。
氷川はそんな私を見て、情けなく思ったのだろうか、眉をしかめた。

「しっかりしてください。昇進するんでしょう?」

氷川の言葉にハッと顔を上げる。
そうだ、昨日、小野田部長から昇進を言い渡されたときのことを、彼に問い詰めようと思っていたまま先延ばしにしていたんだ。
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