イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「どういうことなの! 昇進を断ったって!」

彼の腕を掴み、詰め寄る。
せっかくのチャンスを自ら棒に振るなんて。文句の一つでも言ってやらなきゃ気が済まない。

「私を推薦するように小野田部長に言ったんだって!? どういうつもり!? 本来ならあなたが昇進するはずだったんじゃなの!?」

昇進を私へ譲った理由が同情や憐れみなら、許せない。
自分の力で立場を掴み取るならともかく、おこぼれをもらったって、嬉しくなんてないんだから!

「責められる覚えはないのですが。私はそれが一番良いと判断したまでで」

「そのもやっとした理由が気にいらないんだってば! もっとちゃんと言葉で言ってよ!」

私は掴んでいた氷川の腕を揺さぶった。がくがくと身体を揺らされて、彼はちょっとうっとおしそうに目を細める。

「いつもそう! 氷川さんは回りくどくて、ちゃんと言ってくれない!
私を心配してるってことも、応援してくれてるってことも、全部が裏返しで何も伝わって来ないんだよ!」

彼のお小言は私を想ってのことだったし、私の上にのし上がろうとしていたのだって、私を上から守ろうとしていたからだった。
なのに、彼の愛情は私に全く伝わってこなかった。それどころか、嫌われているのだと思い込み、嫌煙していた。

「ちゃんと、もっと、分かりやすく、流星みたいに言ってよ!」

私が氷川の腕を力任せに突き飛ばすと、彼の身体が一歩分だけ後ろに飛ばされた。
不愉快そうに眉をしかめている、いつもはそう思うのだが、今の彼はなんだか困り果てているように見えた。
< 223 / 227 >

この作品をシェア

pagetop