イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「いやいや、私はね、氷川くんの企画も素晴らしかったと思うよ」

「今回はタイミングが悪かった」

「……申し訳ありませんでした」

前を歩く小野田部長、平山課長、氷川のどんよりとした空気を後ろで見つめながら、私自身も拍子抜けしていた。

私も氷川も双方とも、プレゼンすらさせてもらえなかったのだ。
企画書の一枚目、コンセプトの文字だけで雌雄を決してしまったから。

――これじゃあ、勝負も何もないよ。

私の企画と氷川の企画、吟味した上で選んでもらいたかったのに。不完全燃焼だ。

氷川の企画だって十分優れたものだった。評価されるべきものだ。
それを、タイトルひとつで切り捨ててしまうなんて。
勝っても、ちっとも嬉しくない。

けれど、一番悔しかったは氷川本人だろう。
お役所仕事とはいえ、こんな決着のつけられ方、不本意だっただろうに。


夕方が近づき、空が暗灰色に染まり始めた。
同時に、雨雲がごろごろと音を立てる。
そろそろ雨が降り出しそうだ。
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