イジワル御曹司のギャップに参ってます!
案内された先は、駅に直結した高層マンションだった。
エントランスに入ると、そこは天井の高い広々とした空間で、右側には応接用のソファが、左側には制服を着たコンシェルジュの常駐するカウンターがあった。

どうみても高級マンションだ。
私と給料は変わらないはずなのに、ここの家賃が払えるのだろうか。
ひょっとして、大学院卒って、そんなにもらえるの?

ちょっと悔しい気持ちになりながら、彼の部屋のある十階までなんとか辿り着くことができた。
その間、氷川は私の前に立ち人目を庇い、注意を払いながら歩いてくれた。
大嫌いな氷川と紳士な態度。うまく結びつかなくて複雑な心境だ。

氷川の家の玄関を入ると廊下があって、両側にそれぞれドアがあった。
一つは開け放たれていて、ちらりと覗くとバスルームになっていた。もう一つのドアはきっとトイレだろう。
廊下の先には一人暮らしにはもったいないほどの大きなリビングがあって、奥にも一つ扉があり、きっと寝室なんだろうなと思った。

リビングの中は、男性にしては十分綺麗な方だと思うが、割と人間味のある散らかり方をしていた。
ソファの上に雑誌が転がっていたり、ローテーブルの上には朝飲んだであろうカップが置きっぱなしだったり。
テレビやスピーカなどのAV機器の周りには、どこに繋がっているのか良く分からないコードがのたうっていたり。

機械人間の氷川のことだ、徹底的に掃除された綺麗な部屋を想像していたのだけれど。
こうしてみると、割と普通の男の子に見えて、ちょっと驚いた。
< 31 / 227 >

この作品をシェア

pagetop