イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「俺に触れられるの……そんなに嫌なんだ」

「……え?」

氷川が目を伏せて、小さな笑みを浮かべる。
まただ。落胆するかのような自嘲。悲し気に歪む瞳。

「昼間も、そうだったね。拒絶したり、逃げ出したり……
一緒の傘に入るのも嫌なくらい、俺のこと嫌いなわけだ」

「氷川さん……?」

「まぁ。あなたが俺のこと嫌ってるのは知ってたし。
俺もあなたのことなんか嫌いだし。おあいこだね」

ものすごく投げやりな口調。不機嫌そうに頬を膨らませて、腕を組む。

おあいこって言ってる割には、どうしてそんなに怒ってるんですか……?


「あ、あの、氷川さん? 怒ってる?」
ソファから立ち上がり、恐る恐る覗き込んだ私に
「ぜんっぜん」
明らかにむくれて目を逸らす彼。

いや、怒ってるよねぇ……?


ああ、もう!
仕事上のトラブル対応とか、怒った顧客のなだめ方ならいくらでも分かるのに。
氷川のご機嫌の取り方なんて、さっぱり分からないよう……
仕方なく、私は必死に弁明を考える。

「き、嫌いっていうのは……その、仕事上の話であって」

「あれだけ俺の手を勢いよく弾いといて、今さらフォローとかいらないんだけど」

「さっきのは……急に男性に触れられたから、びっくりして……」

「……日頃散々男に囲まれているくせに。今さらちょっと触れたくらいで驚きなんかしないでしょ」

「囲まれてなんか!」

一体彼はどんな目で私を見ているんだ。
男をはべらせているとでも思っているのか?
実際は真逆なのに。
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