イジワル御曹司のギャップに参ってます!
無理。むりむりむりむり!
やだ、怖い、お願い、もうこれ以上触らないで。

ついに腕がガタガタと震えだし、氷川もそれに気が付いたようだ。涙目で蒼白になる私を見て、眉を寄せる。

「……怯えてる?」

「っ怯えてなんか!」

強がりは強がりになっていなくて、震えて上ずった言葉じゃ説得力の欠片もなかった。

「ふーん。そう……」

もちろんそれを分かっている氷川が、口の端をニヤリと嫌らしく上げる。

「じゃあ、どこまでいけばギブアップするか、試してみようか」

氷川が私の肩を抑えつけ、首の根元に顔を埋めた。

「……っっっっ!」

声にならない声。
首筋に柔らかなものが触れ、頭の中が真っ白になる。

もがく私の腕があっさりと押さえつけられる。
恐怖と緊張と恥ずかしさで荒くなってしまった私の呼吸を感じながら、彼は恍惚の表情を浮かべた。
私の頬を、そっと唇が這う。
ぎゅっと目を瞑って顔を逸らしたら、ふっと嘲るような彼の笑い声が聞こえた。

「ふふ。そんな顔されると、余計に苛めたくなる」

氷川の唇が私の耳に触れる。
びくりと身体が震えてしまい、彼はよりいっそう嬉しそうにした。

「どうしてだろうな。あなたのこと、大嫌いで仕方がないのに、触れたくなるのは」

百メートル走を全力で走っているときのように、心臓がバクバクと音を立てていて、うまく呼吸が続かない。
言葉を発することができず、抵抗すら示せない私に、氷川の行動はエスカレートしていく。

「もっと酷いこと、しちゃおうかな」

挑発的な、氷川の瞳。

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