イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「おかげで、誰かさんには、嫌いだとか、気持ちが入っていないとか、触るなとか、散々言われたけれど」

「う……」

もちろん誰かさんとは私のことである。
確かによくよく考えてみると、相当失礼だったかもしれない。
というか、氷川、よっぽど根に持っていたんだなぁ。
思っていたよりもずっとストレートな感情を持つ人間味に溢れる人物なのかもしれない。

不機嫌そうに、けれどどこか冷めた様子で氷川は肩を竦ませる。

「俺がそういうの気にも止めない冷たい人間だと思っていたんでしょう。
冷徹だとか機械みたいだとか、影で散々噂されているのは知っているよ」

身に覚えがありすぎてドキリとした。
そんな陰口を叩かれて、本当は冷徹でも機械でもない彼は、どんな気持ちになっただろう。

「……ごめんなさい」

小さな声で呟いたら、彼は「別に」と興味のない声で言った。
「あなたが謝ることじゃない。自分でそうイメージ付けたことだしね」

不愛想にそう言い放ったが最後、彼はキッチンの奥に入ってしまい、柱の陰で見えなくなってしまった。

「もう夜だし、お腹空いているでしょう。何か作るから適当に休んどいて」

カチャカチャと食器を動かす音と、彼の声だけがキッチンの陰から響いてきた。

「……はい」

私はソファにちょこんと座り、言われた通りおとなしくすることにした。
早く服が乾かないだろうか。氷川のそばにずっといるのは、なんだか気まずい。
それに、これから会社へ戻って、明日の朝に提出期限を迎える書類を仕上げなければならないのだ。
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