イジワル御曹司のギャップに参ってます!
第三章 翻弄しないでダブルキャスト



「起きて。遅刻するよ」

耳元で聞こえた声と、瞼の裏で感じる光に、私はゆっくりと目を開けた。
朝の爽やかな日差しが一気に視界に押し寄せてきて、思わず顔を伏せてもう一度ぎゅっと目を瞑る。
しばらく寝ぼけたあと、鼻腔を掠める美味しそうな匂いに気が付いた。

朝……?
ここ、どこ?

「今何時!?」

飛び起きた私に、横にいた氷川がうわっ、と目を丸くした。

「七時だけど」

「どうしてもっと早く起こしてくれなかったの!?」

「あなたの起きたい時間なんて知らないよ」

慌ててベッドから這い出し、氷川の横をすり抜けリビングへ向かうと、テーブルの上にはコーヒーとささやかな朝食が用意されていた。

私のあとをだらだらと追ってきた氷川が
「朝からそんなに元気に動けるなんて、本当に羨ましい」
低血圧なのだろうか、だるそうに伸びをする。

いや、そんなことを言っている場合じゃないって。
何しろ今日は、平日。これから会社だ。
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