イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「このやろー言わせておけば生意気なー」という台詞が喉元まで出かかった。
そんなもんいろいろ考えてるけどまだはっきり言えるレベルじゃないんだよ本当は分かってるでしょうわざとでしょう!
ごくん、と飲み干して、ひとつ深呼吸をする。
取り乱したら負けだ。

「……近日中に詳細を文書にまとめて配布します」

「お願いします」

すこしピリッとしたほの辛い空気のまま、プロジェクト会議第一回は幕を閉じた。


「あああああああ……」

予定終了時刻を少しおしてしまって、社員がバタバタと会議室を飛び出していく中、私はため息をついて会議卓の上に突っ伏した。

「朱石さん……大丈夫ですか?」

資料をまとめながら市ヶ谷くんが心配そうに私を覗き込む。

「大丈夫……ちょっと気持ちの整理がつかなくて」

「気持ちの整理……?」

「ううん、こっちのこと」

やっぱり氷川は氷川だった。
生意気で感じの悪い冷徹男、氷川流星だった。
じゃあ、昨日の彼はなんだったんだ。
誰よりも勉強家で、ちょっぴり優しくて意地悪な、一緒に夢を語り合ったあの男は。一体誰だったって言うんだ。
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