イジワル御曹司のギャップに参ってます!
大学を卒業したあと、大手広告代理店『美倉広告企画』に勤めて六年。
下っ端から始まった私も、今では企画の提案を任される立場に成長した。
今回の依頼主は化粧品メーカー『ジュエルコスメ』。
年間何十億という巨額な費用を広告に投資する大手化粧品メーカーだ。
我が社との取引はこれで二度目。今後の展望が期待されているこの企画、なんとしてでもモノにしたい。


私と氷川、他三名分のプレゼンが終わって、上層部の審査タイムに入った。
私を含む一般階級の社員は一時休憩となる。

会議室を出る直前、氷川が平山課長と話しているのが目に入った。

立派な大学の院を卒業した彼は、いわゆるエリートコースというヤツで、ここにいる誰よりも出世を期待されている。

あの熱意なし、やる気なし、お役所仕事しかしようとしない機械人間が平山課長のお気に入り。
俄然、腹が立つ。


休憩室へ向かう廊下の最中、私の代わりに市ヶ谷くんが苛立ちを爆発させた。

「氷川さん、朱石先輩を目の敵にしてますよね!? 毎回毎回喧嘩売ってきて。
だいたい、赤石先輩の方が氷川さんより先輩でしょう? なんであんなに偉そうな態度取れるんですか!」

「……厳密に言うと、入社年次は私の方が一つ上。でも歳は私が一つ下。彼は院卒だからね」

「つまり、仕事のキャリアでは朱石先輩の方が上ってことじゃないですか。
もっと敬うべきですよ!」

ガラスのパーテーションと目隠し代わりの観葉植物に囲まれた休憩室。
自販機二台と横長のベンチ二つが置かれている小さなスペースに、先客がいないことを確認して愚痴の華を咲かせる。
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